完璧主義が陥る無駄な考えとストレス

クソったれ!

 

僕はこの日、ささいな事でイラついていた。

 

一服でもして気を紛らわせるか、そう思いショッピングモールの喫煙所へと向かう。

 

一日に二本ほど吸うミニマム喫煙者の僕にとって、服がタバコ臭くなるのは好ましくない。

 

生憎この日はお気に入りの黄色いダウンを着ている。

 

まぁ、一本吸ってすぐ出ればいいか、そんな軽い気持ちで喫煙所の扉を開けた。

 

8帖程のスペースに2人の喫煙者、思ったほどタバコ臭くはなさそうだ。

 

すぐ出れるよう入口付近のイスに腰を掛ける。

 

そしてポケットからタバコを取り出し火をつけた。

 

すると扉が開き3人の若者が入ってくる。

 

青と緑とピンクか、随分カラフルな服 着てる奴らがきたな。

 

そんな事を考えながら、僕は自分の服を見て気付いた。

 

赤がくればゴレンジャーの完成だということに!

 

一瞬にして僕の厨二病が疼きだす。

 

しかも先にいた2人の服装は黒!

 

敵役の雑魚キャラ色は既に揃っている!

  

 

取り乱すな!

  

そう自分に言い聞かせながら僕は冷静を装った。

 

しかし僕の鼓動は収まらない。

 

とりあえず目の前の自販機でコーヒーを買い、落ち着くことにした。

 

そして冷静に分析。

 

おそらく次に入ってくる人の服は、黒色がベターだろう。

 

何故なら冬だからだ。

 

冬は気分的に落ち込みやすく、それが服の色にも影響してくるということを僕は知っている。

 

なので黒、次にグレーか茶、そしてその次がベージュか赤!

 

これが順当だろう。

 

なんだかんだ戦隊モノの影響で皆一度は赤色の服を買ったことがあるはず。

 

明るい色だったら間違いなく赤が一番人気!

 

誰だって一度はリーダーに憧れる。

 

女性がお姫様に憧れるのと一緒の心理だ。

 

そんなことを考えてるうちに、一本吸いきってしまっていた。

 

チッ!

 

仕方ない延長だ!

 

そう思い、僕は二本目のタバコに火をつけた。

 

すると扉が開いた。

 

入ってきたのは紺色の作業着を着た2人組。

 

はっ?!

 

空気読めよ!

 

僕は冷たい目で威嚇した。

 

ふ~っ!

 

まぁ いいだろう。

 

アイツらはゴレンジャーの設営スタッフってことにしといてやろう。

 

本来ならば ゴレンジャー VS 敵 というのがベストだが、ここはショッピングモールの喫煙所。

 

まっ、いいだろう。

 

すると黒い服の男性が1人出て行ってしまった。

 

おい!待ってくれ!

 

僕は心の中で叫んだ!

 

あの男性は今、自分が必要とされていたことに気付いていない。

 

このままだと赤が来てゴレンジャーが揃ったとしても、

 

ゴレンジャー VS 雑魚キャラ1人&設営スタッフ2人

 

というおかしな構図になる。

 

そもそも雑魚キャラ1人に対してゴレンジャー総動員なんて、軽いイジメじゃないか!

 

くっ!

 

僕は頭を抱えた。

 

そして二本目のタバコを吸い終えた。

 

延長!

 

そう呟き僕は三本目のタバコに火をつけた。

 

するとまた扉が開く。

 

なんなんだこれは?

 

どうやら僕がタバコに火をつけると、人が入ってくるシステムみたいだ。

 

入ってきたのは、ワインレッドのロングダウンに杖をついた厚化粧の婦人だった。

 

チッ!

 

惜しい!

 

赤色がくすんでる!

 

リーダーは発色の良い赤色じゃなきゃダメなんだ!

 

ここにきて僕の完璧主義が自己主張を強めてきた。

 

そして婦人を凝視した僕は思ったのだ。 

 

あれは正義の味方っていうか、敵の雑魚キャラに指示出すボス役だろ!

 

よしっ!

 

ボス役はアイツで決まりだな!

 

いい感じで駒が揃ってきたぞ。

 

僕は1人でニヤついた。

 

しかしそんな僕のニヤつきを嘲笑うかのように、カラフルな3人組は喫煙所から出ていったのである。

 

えっ?

 

一瞬にしてテンションが下がった僕は、吸いたくもない三本目のタバコを吸い終え、静かに喫煙所の扉を開ける。

 

入れ違いで赤いダウンの青年とすれ違う。

 

 

遅ぇよ。

 

そう呟き僕は喫煙所を後にしたのだった。

 

結局僕は吸いたくもないタバコを二本吸って服がタバコ臭くなるという最悪な状態になっていた。

 

もちろん喫煙所に行く前よりストレスが溜まったのは言うまでもない。

 

 

終わり

 

 

 

 

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