始業式当日、自作のコスプレ学ランが鏡に映るたびに自己陶酔しては立ち止まり時間を無駄にした僕。
そのため不本意ながら始業式をバックレる形になってしまう。
~始業式翌日の朝~
失敗を重ねるほど馬鹿じゃない!
鏡に映った自分に酔いしれるのなら、視界を悪くすればいいだけの話!
そう言うと僕は机の引き出しからサングラスを取った。
昔フリマで買ったものの、色が濃すぎて前が見えないという理由から使うのを止めた代物だ。
前が見づらいサングラスの威力は、ある意味絶大だった。
なぜなら点字ブロックの上を歩いたり、人に掴まったりして、違った意味で時間が掛かってしまったのである。
それでも昼前には卍須加学園高校の最寄り駅、地獄山駅に着くことができた。
前日に比べると半分以下の時間で最寄駅に着けたこと、それは僕にとって大きな進歩である。
同じ過ちを繰り返さないという佐藤家の教えを胸に、僕はいつも以上に自分を誇らしく思った。
よし、あとはこの地獄坂を上れば、卍須加学園までもうすぐだ。とその時、怒鳴り声が聞こえてきた。
お前ナメてんのかよ!調子乗ってると殺すぞ!
どうやら近くで喧嘩?が起きてるらしい。
巻き込まれる前に急いでこの場から去ることを僕は秒速で決意する。
しかしそんな僕の気持ちとは裏腹に足がなかなか前に進まない。
理由は簡単だ。
前が見えないからである。
サングラス効果は絶賛継続中のようだ。
さらに罵声は続く。
てめぇ誰の真似してるかわかってんのかよ!
ハルマ君のグラサンとかぶってんだよ!
スカしてシカトこいてんじゃねぇよ!
この時僕は気付いた。
ハルマ君?ってか今グラサンって言った?、、もしかして絡まれてるのって僕じゃね?
動揺した僕は走って逃げようと手足を大きく振った。
大きな衝撃が僕の体全身を襲った。その勢いで掛けていたグラサンが落ちる。
何が起きたのか確認するため胸ポケットに入れていた眼鏡をかけ辺りを見回す。
すると目の前にはチンピラ二人が倒れていた。
そして、
ハルマ君?がこっち見てた。