卍すか学園 ④穴山カオル

      

    

        

そろそろ学校に行かないとタイトル的にマジでヤバい。

そんなことを考えながら僕は踏ん張っていた。

どうやら朝飲んだコーヒーでお腹がゆるくなったようだ。

トイレの個室で鼻息の荒いシマウマの如く踏ん張ること20分

ポチャンという音と共に任務を完了させる。

            

やれやれだぜ、そう言いながら僕は扉を開けた。

           

           

とりあえず僕はすぐに扉を閉めカギを掛けた。

             

~僕心の声~

ふっ普通に893じゃん!しかも組長クラス!!

なんなのアイツ!?

白スーツに七三分けってどういうセンスよ!!!

今時あんなあからさまな893いないでしょ!!!

まっ漫画の世界じゃないんだから!?

、、、ッ!?

、、、あの格好って、、、

        

          

次の瞬間扉をノックされる。

ビビって慌てる僕。

すると外の漢(おとこ)が話しかけてきた。

     

漢:すいません穴山カオルと申します。朝飲んだホットミルクでお腹が緩くなってしまってもう限界です。なる早でお願いします。

なんて丁寧なお願いなんだろう、僕は個室から出て漢に言った。

  

お待たせ。用が済んだら話がある。そう言って僕は外へ出た。

漢は礼を言いすぐに個室に駆け込んだ。

      

待つこと約一時間、漢は満足そうな顔してトイレから出てきた。

    

     

相変わらず怖いナリだ。しかしここでビビってはいけない!僕は勇気をもって漢に単刀直入に聞いた。

       

僕:その格好って某有名格闘漫画にでてくるあのキャラクターですよね?

漢:仰る意味がわかりかねますが、どういうことでしょうか?

僕:照れなくていいですよ。僕は分かってるんで。

漢:はて?何のことだか、、、。

僕:大丈夫ですよ。

漢:?

        

この一連の流れを何回か繰り返すこと数分、僕は段々イライラしてきた。

理由は簡単だ。

コスプレイヤーがコスプレを指摘され照れながら誤魔化すのは初心者コスプレイヤーにとってあるあるのこと。なのでそれに関しては全然問題ない。昨日出会ったハルマがいい例だ。

しかしこの漢はあからさまなコスプレをしといて、照れるどころか知らないとシラを切ろうとしている。こいつのこの態度は全コスプレイヤー及び全漫画キャラクターをバカにする最も恥ずべき行為だ。

同じコスプレイヤーとして頭にきた僕は語気を強めて彼に言った。

僕:あんたさ、その格好してシラ切るって恥ずかしくねぇの?

漢:、、、恥ずかしいに決まっているじゃないですか!

僕:だったら素直に認めろよ!    

漢:さっきから何を言ってるんですか!あなたもしかして私が好んでこの格好をしてると思っていませんか?

僕:えっ?、、、、、、、

         

         

それから一時間ほど僕は彼と話をした。

         

彼の名前は穴山カオル、15歳。なんと卍須加学園高校の生徒だという。カオルは格闘好きな半グレの父親の元に生まれ、幼少期からやりたくもない格闘技をやらされていた。服装も全て父親の趣味らしく、本人はカシミヤのセーターにタイトなジーンズを穿きこなしたかったが父親はそれを許さなかった。そんな父親の不満をカオルは僕に吐露した。

本当に傲慢で下品な父親ですよ!口癖が ‶男として生きろ″ と ‶男起ち″ ですからね!最低なクズですよ!

        

一時間話したうちの九割くらいは父親の愚痴だった。

僕はカオルの愚痴を一通り聞いた後、彼を漫喫に誘った。

そしてカオルがコスプレさせられているであろうキャラクターが登場する漫画を彼に読ませた。

最初は漫画なんて低俗なモノは読めない!そう断っていたカオルだが、途中から一コマ一コマ真剣に読みだした。

           

             

      

カオルと漫喫に入って数時間、窓を覗くと辺りはすっかり暗くなっていた。

あ~結局今日も学校行けなかったな。

そんなことを考えていたらカオルに肩を叩かれた。

全部読み終わったからもう出ない?そう言われ僕らは漫喫を出た。

        

無言で歩くこと数分、カオルが口を開く。

       

下品な男が勃起したことを宣言する時に使う略語 ‶男起ち″ 、 

              

          

  僕: でも実際は違った、、、

カオル: えぇ!男起ちではなく “任侠立ち”

  僕: そして男ではなく ‶ 漢 ″ だろ?

カオル: はい!俺 、明日から漢として生きてきます!

       

その後カオルは何度も僕にお礼を言った。その都度僕は、礼を言うのは俺じゃなくて板垣先生にだろ!と返した。

カオルと別れ一人家路につく僕の頭の中では何故かGet Wild が流れていた。

誰かの為に生きれた今日を誇りたい、そんな佐藤家の教えを胸に、明日こそは学校に行く!そう誓う僕なのであった。

      

          

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