何ていうデカい門だ。
入学願書さえ出せば入れる学校の門とは思えない程の大きさ、、、
圧倒されてる僕らに一人の男が話しかけてきた。
僕とハルマに緊張が走る。
さっきまで人の気配は完全になかったはず、、、。
この男はいったい何時からいたのだろうか?
いくら僕たちが門のスケールの大きさに目を奪われていたとはいえ、近くに人がいることに気づかないなんてありえるのだろうか?
呆然としている僕らを尻目に、男はさらに話しを続ける。
「お前らみたいなひよっこが触れていいような門じゃない。坊っちゃんは家に帰ってママのパイオツでもしゃぶってな!」
そう言うと男はニヒルな笑みを浮かべた。
この発言にハルマが噛みつく。
「今何て言った?俺らを坊っちゃんだと?ふざけやがって!」
イラっとしたハルマは男に近づく。
これは面倒臭いことになる、そう確信した僕は二人の間に割って入る。
僕:うちらは卍須加の生徒ですよ。生徒が学校の中に入ろうとするのは自然なことですよね?
男:生徒だと?ふーん。ならお前らバッチはどうした?
僕、ハルマ(以下ハ):バッチ?
男:そうだ!ここの生徒なら卍すかバッチを持ってるはずだ!
僕:卍すかバッチ?ちょっと何言ってるか分かんないんですけど、、、
男:何でだよ!?
ハ:そもそもあんた誰だよ?
男:私は卍須加学園の風紀委員にして門番の下臭(かしゅう)タイセイという者だ!
下臭先輩は風紀委員で門番ということもあり、僕達に卍すかバッチの説明をしてくれた。
卍すかバッチ、これは卍須加学園の生徒である以上、絶対に身に着けていなければいけないもの。当然このバッチが無いものは卍須加学園の敷地内には入れない。そして時にはこのバッチが命よりも大事な時があるという。
正直バッチが命よりも大事とかいうのは理解できないけど、無いと学校内に入れないということだけはわかった。
しかしここで疑問が湧いてきた僕らは、下臭先輩に尋ねた。
「卍すかバッチってどこでもらえるんですか?」
すると下臭先輩は呆れた顔で答えた。
「ったく、お前ら入学通知の封筒の中身見てないのか?あの中にちゃんと入ってるぞ!」
そう言われて僕は思い出した。
確かに入学が決まった際、封筒が届けられていたこと、そして今、僕の上着の左ポケットにその封筒が入っていることを。
すぐに左ポケットへ手を入れ確認する。やっぱり入ってる。
しかしこの瞬間、一つ問題が発生したことに気付いた僕はハルマに目をやる。
あの表情、どうやらハルマの奴封筒を家に忘れてきたな、、、。
僕がそう思った瞬間、ハルマは下臭先輩にとんでもないことを聞く。
「下臭先輩、俺その封筒捨てちゃいました、、追加でバッチ貰えることできますか?」
まさかのおかわり発言。
これには下臭先輩も呆れ顔。
さすがの僕もハルマを置いて構内へ入る決意をし、ポケットから封筒を取り出した。
すると封筒と一緒にポケットからバッチが落ちた。
慌てて拾う僕。
しかしここで異変に気付く。
封筒の口は開いていたのだが、開いた口は上向きでポケットに入っていたため、バッチが封筒の外に出るのは考えられない。
僕はすぐさま封筒の中を確認する。
するとやっぱり卍すかバッチが入っていた。
じゃあ僕のポケットに入っていたこの卍すかバッチはいったい、、、。
そうかウリリンのバッチだ。
倒れたウリリンを抱きかかえて介抱した時、何かの拍子でウリリンのバッチが僕のポケットに入ったに違いない。
僕がバッチを二個持ってることに気付いたハルマが言う。
「イチロー、バッチ二つもいらないよね?一つ俺に恵んでくれないか?」
僕は咄嗟に答えた。
「これはウリリンのぶん!」
そう言うと僕はハルマにウリリンの話しをした。
全てを話し終えた僕にハルマは言った。
「ウリリンはもう戻ってこない。前を見ろイチロー!俺にウリリンのバッチをよこして、一緒にウリリンを殺した奴に復讐するんだ!」
確かにハルマの言う通りだ。ウリリンは戻って来ないし、復讐するなら仲間は多いにこしたことはない。
僕はハルマにウリリンのバッチを渡した。
そして遂に僕らは卍須加学園の構内に入る。