ギャップ萌え?
いや違う。
僕は愕然とした。
それは帰省ラッシュにごった返す、新幹線の車内で起こった。
窓側の指定席を取っていた僕は、外の田園風景を眺めていた。
上り列車の始発駅から乗車したため、乗客はまばらだ。
そのこともあってか三列シートの僕の隣の席は二つとも空いている。
もし次の駅で、山本美月ちゃんが隣の席に座ってきたら、、、
いや、吉岡里帆ちゃんでもいい、、
、、、違う!
いっそのこと二人まとめて、、、
都合の良い妄想をしながら僕は一人でニヤつく。
座席の肘掛け部分に肘をついていた僕の腕が、隣の席の美月ちゃんの腕に当たった。
あっ、すいません、、、
お互いの声がタイミングよく重なる。
あっ、、、フフッ、、、
同じリアクションをした僕らは自然と見つめ合っていた。
心なしか美月ちゃんの頬が赤色に染まってる気がした。
そう思うと僕の頬も自然と赤く染まる。
その光景を二つ隣の席に座っている吉岡里帆ちゃんが、悔しそうに見ていることに気が付いた。
ごめん里帆ちゃん!
、、でも、、今の俺は美月ちゃんに夢中だから、、、
僕は心の中で里帆ちゃんに謝った。
気が付くと木村カエラのバタフライが車内で流れている。
まるで僕ら二人がこのまま結ばれるかのようなシチュエーションである。
いくらなんでも偶然にしては出来過ぎ、これは、、、
そんな事を思った矢先、美月ちゃんがポツンと呟く。
お互いの思いが一つだという確信的なフレーズ。
僕は腹を括って告白した。
美月ちゃん!ずっと大切にするから、僕のお姫様になってください!
少し間をおいて、美月ちゃんは笑顔で答えた。
はい!喜んで!!
居酒屋の店員か?と思うほど元気の良い返事に萌える僕。
すると、
お似合いの二人って本当にいるんだね、、私の出る幕は無かったな、、、
そう言い残し、里帆ちゃんは他の席に移動した。
僕は気付いていた、里帆ちゃんの目が赤く潤んでいたことに。
モテるっていうのも辛いなぁ、、、、でも、
里帆ちゃんの分まで、美月ちゃんを幸せにするから!
そう決意した僕は胸に手を当て、マイプリンセス美月に心臓を捧げた。
こんな妄想をしているうちに、列車は次の駅に到着していた。
たくさんの人が乗り込んでくるなか、必死にマイプリンセスを探した。
しかし、というか当然 美月ちゃんの姿はなく、代わりに油ギッシュで太めの中年男性が僕の前に立っていた。
まさか?
、、、嘘だろ!?
こいつだけは勘弁してくれ!
お前の立つ場所はここじゃ無い!
ラーメン二郎の店前だろ!
どっか行け!
僕は必死で祈った!
しかし現実は残酷だった。
太めの中年は当たり前のように隣の席に座ってきたのである。
美月ちゃんから太めの中年が座るという現実。
そのギャップに僕の心はズタボロにされたのである。
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