待ちなさい!
夜道を歩いていた僕は、いきなり三人組の警察官に囲まれた。
まさか職質?
一瞬にして僕の顔色が変わる。
なぜなら職質される人間には何らかの外見的な違和感があるからだ。
夜中にグラサンかけてたり、
陽が出てないのに被り物してたり、
ドレッドで和服、
など挙げればきりがないことばかり、、、。
それを踏まえたうえで、今日の僕のコーディネートを紹介したい。
髪型は通常通り、被り物無しの男気ヘアー
トップスは清潔感を前面に押し出した白シャツ
生地は夏を意識した麻100%
ボトムは黒のワークパンツで裾をロールアップ
シューズは黒のローカットスニーカー
上品さを出すため生地はスウェード
備考:薬局の化粧品コーナーで、お試しの香水をワンプッシュして爽やかメンズを演出。
今日のファッションテーマ
《 ~里帆は俺の嫁~ 》
白の長袖シャツをまくり腕の血管を見せることで清潔感と爽やかさの中にセクシーな力強さをチョイ足し、黒のパンツでメリハリを強調する。
女優で例えるなら吉岡里帆ちゃんを彷彿とさせるようなコーデ。
もちろん そんな僕を見た人は、
あれ?吉岡里帆が一瞬チラついたんだけど?
というような顔をし、
二度見 からの、
お決まりの三度見!
正直な話、
えっ?里帆は俺の嫁だけど!?
そう僕が言っても誰も疑わないレベル。
そんな僕に職質?
ふざけてる!!
スイッチが入った僕は、里帆の男として恥ずかしくないよう紳士的な態度で質問した。
「お疲れ!何か用?」
「君は何がしたいんだ?」
ん? 何だこの警官?
質問を質問で返すなんて、ジョジョの世界では殺してくれと言ってるようなもの、、、、
僕の厨二心がピクつく。
しかし今の僕は里帆の旦那、、、役、、
厄介ごとは御免だ。
「通報が入ったんですよ!わざとじゃないですよね?」
さっきとは別の警官が、僕の下半身をチラ見しながら聞いてきた。
ん?
下を見た瞬間、僕は理解した。
社会の窓がウェルカム状態であること、
その窓から、トランクスが威勢よく上向きに飛び出していること、
そして トランクスの色が、チェリーピンクベースに赤ラインという最悪の組み合わせ だという事実。
普通に考えれば分かるわけで、
暗い夜道
チャック全開でそんなモノ立ち上がらせてたら
ただの変質者なわけで
明らか職質対象なわけで、
でも、
実際は、
僕のジュニアはご起立してないわけで、、、
さっきまで吉岡里帆の旦那面して爽やかメンズを気取ってイキりの頂点にいた僕は、逆にダサさの最高到達点にいたということに気付く。
逆だったんだね、、、。
さよなら、もう終わりだね、、
遠くから里帆ちゃんの声が聞こえた気がした。
とりあえず僕は、赤面しながら無言でチャックを上げた。
5秒ほど何とも言えない空気が流れ、
えっと、、じゃっ、そういうわけで💦
そう言いながら警官は去っていった。
iPodに入ってる ZONE の SECRET BASE~君がくれたもの~ を聴きながら僕はちょっぴりセンチな気分になった。
そんな僕を包み込むかのように、9月の夜風は思いのほか温かった。